黄昏の船着き場にて

風の吹くまま気の向くままに

理想の原風景を求めて―山形

田園風景を見ると、初めて訪れた場所なのに、どこか懐かしい感じがする。それはきっと「理想の原風景」みたいなものが勝手に私の中に刷り込まれていて、似たものを感じるからだろう。今回訪れた山形県大蔵村肘折温泉も、やはりどこか懐かしかった。

 

10月31日

東京駅からつばさに乗って山形駅へ向かう。いつもだったら高くて新幹線など乗れないのだが、JR東日本えきねっとでの割引「お先にお得だねスペシャル」でなんと半額だったため、利用することにした。新幹線での旅は旅情があり乗っているだけで楽しい。

 

11:30頃山形駅に着き、新庄駅へ行く電車が少し待つため、駅直結の百貨店に入りおみやげを物色した。巨大なセロリ(なぜかセルリー表記)があり、これでポトフのダシを取ったら最高だろうなと思った。関東ではこの値段でこの大きさはなかなか出会えない。

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13時手前に新庄駅に着く。これから肘折へ向かうバスに乗る為、軽く腹ごしらえをと思い駅の蕎麦屋に入ろうとしたが、やっていなかったため少し歩いて「急行食堂」へ入った。

 ラーメンの写真

急行食堂 - 新庄/定食・食堂 [食べログ]

名物らしき「とりもつラーメン」を食す。丸い球体が入っておりてっきり卵の黄身かと思っていたらキンカンという成長中の卵らしい。珍しいものを食べられた。

 

ようやく訪れたコミュニティバスに乗り込み、肘折を目指す。新庄駅から肘折温泉まで、一時間もかかるようだ。バスは人々を詰め込みひたすらに山道を登って行く。

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なんだか『夏目友人帳』の夏目君が住んでいるところみたいだな、そのあたりの森から妖怪が出てきそうだなと想像しながら一時間ほど揺られると、とうとう鄙びた温泉街に到着した。

 

バスを降りるとすぐそこにはレトロな郵便局が。

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調べたところ、昭和12年に建てられた木造建築の郵便局舎で、窓が〒の木枠であったりと意匠をこらしたデザインでなかなか面白い。町のシンボル的存在のようで、道行く人が写真を撮っていた。

 

今回のお宿である「若松屋村井六助」にチェックインして、荷物を降ろす。古い感じはするが掃除が行き届いており、気持ちよく過ごせそうな部屋だ。

山形県肘折温泉 若松屋 村井六助

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温泉は男女1つずつのほかに、貸し切りのお風呂(予約はできず、空いているときに入ることができる)があり、ゆっくりと温泉と向き合える宿だ。お風呂は体感的に39度くらいかな?熱すぎずぬるすぎずちょうどよい、いつまでも入っていたくなる温泉だった。

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宿の温泉に入る前に、夕食までの時間で街歩きをすることにした。

移動で少し身体が固まっていたので、まずは公衆浴場の「上の湯」でひとっ風呂。ここは温泉にただ入る為の場所なので、私もかけ湯をしてから温泉に浸かることに。昼間に入る温泉ってなんでこんなに最高な気持ちになるんでしょうね。

風呂場になぜか仏像があったので、見つめ合いながら体育座りで温泉と一体化することに専念した。

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上の湯から上がるとぽっかぽかで、コートが要らなくなったのでいったん宿に荷物を置いて、街歩き再スタート。こんな寒いのに何で皆、素足に下駄で、浴衣なんかで出歩いているのだろうと思っていたけれど、温泉に入って暑かったのだなと理解できた。

町並みは極めてレトロで、どんなどころでも写真を撮りたくなってしまうような魅力を備えていた。

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 橋を渡ったり川を眺めたりしながら過ごすあっという間に夕食の時間に。

夕食は刺身や焼き魚のほかに、お肉たっぷりの芋煮、キノコの和え物、食用菊のおひたしなど山形らしい食材が多く使われていて大満足だった。なかでも芋煮は良い和牛が使われているのかうま味があり味付けも非常に好みでおいしかった。

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11月1日

名物の朝市を巡る為に頑張って早起き。肘折は朝が早く夜も早い朝方の町のようだ。

朝市で売られているのは野菜や干したきのこ類、餅やしそ巻きなど素朴な食材。私はしそ巻きが大好きなのでもちろん購入。同行者は餅を買っていた。

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売られているものより印象的だったのは、それらを売るお婆さん達の姿だ。皆ほっかむりのようなものを頭に被って、小さくて、同じ人が何人もいるのかと錯覚するほどだった。

 

朝食を食べて行きと同じバスに乗り込み、新庄駅へ。駅の蕎麦屋が営業していたので、私は鴨肉カレーを、同行者は鴨南蛮そばをいただいた。

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十割蕎麦と鴨料理 かもん 新庄駅本店 - 新庄/そば [食べログ]

 

昼過ぎ、各停の電車に揺られながらとうとう山寺駅へ到着。ちょうど紅葉が見られる季節で、あたりは観光客でにぎわっていた。

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なかなかに険しい道のりを歩き続け、とうとう一番上まで到着。登り始めるまで震えるくらい寒かったのに、頂上ではすっかり暑くなってコートを脱いで一休みした。

帰りがけに骨董屋を見て、茶屋で餅を食べて帰路へ。山形駅周辺の店でお土産を買いこみ、つかの間の旅行は終わりを迎えた。

 

社会人になってもちょこちょこ旅行できることを嬉しく思う。