黄昏の船着き場にて

風の吹くまま気の向くままに

青き湖面と、牛ばかり②ー釧路・トドワラ・阿寒湖周辺

5月4日は朝から慌しかった。

いつもは9時間睡眠の私が、7時にホテルを出発するという苦行をしても訪れたかったのは「鮭番屋」だ。鮭番屋は炉端焼きの店である。朝から炉端焼きで新鮮な魚介類と白米とかき込むためだけに、日ごろ乗らないタクシーを捕まえて店へ向かった。

 

さて、鮭番屋に到着すると、すでに何人か店の前で待っている。中に入り整理券を取ると、6番目。よくよく説明を読むと、炉端焼きの1巡目で入れるのは6番目までだという。この時、ラッキー!今日はついてるなと確信した。

開店時間になり、店内に入ると店内には魚介類がずらっと並ぶケースが。ワクワクしながら選ぶ。

会計を済ませ炉端焼きのエリアに入ると、店員さんが慣れた手つきで魚介類を焼いてくれる。焼き加減とはなかなか難しいもの。それを全て行ってくれるとは嬉しいサービスである。

最初に頬張ったのは、ホタテ。凝縮された旨みが口いっぱいに広がり、美味い。次に鮭のハラス。もともとハラスが好きなのでこれを炉端で朝から食べられるのは至福の極みだ。脂の乗った身と白米をかき込む。身の塩味と脂の甘味で脳が幸福で満たされる。大満足のおいしさだった。最後に大粒の牡蠣を食べ、店を後にした。

 

レンタカーを借りて、最初に向かったのはフィッシャーマンズワーフという商業施設の中にある「魚政」という店だ。その店で釧路名物「さんまんま」を購入した。炊き込みご飯の上に焼いた秋刀魚を乗せ、間に大葉を挟んだ食べ物だ。鮭番屋で食べたこともあり一口しか食べなかったが、脂の乗った秋刀魚に大葉の香りがなんとも食欲をそそる味だった。

 

途中で時間があったので、何の気なしに釧路湿原へ行くことにした。丹頂鶴観れるかな?なんて話しながら湿原が一望できる場所まで軽い登山をしたが、いざ辿り着くと予想を超える広さに圧倒された。今まで見た景色の中で、1番広かったんじゃないだろうか。あまりにも広いので丹頂鶴らしきものは豆粒のようにしか見えなかったが、改めて北海道の雄大な広さを感じられた。

その後車は、こんなカーブあっていいんですか?と思わず突っ込まずにはいられないような山道や、永遠と続く直線、その脇には牛、または馬が牧草を食べている……というような長閑な道を走り続けた。

少し疲れたので、休憩がてら厚岸グルメパークへ寄ったが、かなりの混雑でなかなか車を止めることができなかった。

なんとか車を止めて、牡蠣とアサリ汁を購入。

グルメパーク内の小さな水族館で目を癒し、お土産に猫足昆布と牡蠣ラー油漬けを買って、継ぎなる目的地へ向かった。

(ところで、厚岸グルメパークに点在していた謎の外国人のパネルはなんだったのだろう。なんの説明もないのが不思議だった。)

 

さて、今回の旅のメインイベントの一つ、コープはまなかにやってきた。ここのお目当てはタカナシ4.0牛乳を使ったソフトクリームを食べることである。工場が実家からそう遠くないところにあったこともあり、タカナシ4.0牛乳は子供の頃から飲んでいた。飲むたびに美味いなぁと思っていたが、その牛乳がハーゲンダッツに使われていることを知ったのは北海道に越してきてからである。

見慣れたタカナシの看板を見ると、実家のことを思い出し少し恋しくなった。

ソフトクリームを食べると、胃にもたれないようなさっぱり感の中に、濃密な牛乳の旨みを感じる。これからいくらでも食べられそうだ。美味しかったので、久々に牛乳の方も飲みたくなり、コープで購入した。

寄り道が多くなったが、ようやくこれからこの世の果てを目指し車を一直線に走らせる。

途中で北方領土が見える道の駅に寄り、いよいよ砂嘴に入ると、だんだんと視界の両側が海になってゆく。あぁ、とうとうこの世の果てを見れるんだ、長かったなと思っていると、不意に暗い枯れ木の群れが見えてきた。

まだ着いていないはずなのに、なんで?カーナビには「ナラワラ」とある。どうやらミズナラが立ち枯れ、そのまま残っている場所のようだ。降り立ってしばし眺めると、夕暮れまで時間があるのにも関わらずなぜだか背筋がゾッとした。魔女でも住んでいそうな場所だ。それも、性格がねじくれ、誰にも相手にされずこの世を憎む老婆の魔女。普段そんなファンタジックなことは考えないが、ここではそんなことを真剣に想像させるような何かがあった。

さらに奥に進み、車を停めて歩きすすめると見えてきたのが今回の旅の目的「トドワラ」だ。こちらはトドマツの枯れ果てた姿が立ち並んでいる。「世界の果て」とも言われるその場所で、途中の売店で買った羊羹を食べながら思ったのは「死後の世界がこんなだったら嫌だな」ということだ。長い時をこんな場所で過ごすのは、あまりにも辛すぎる。小鳥達を追いかけるオジロワシを横目に、私たちは野付半島を後にした。

 

次は阿寒湖とその周辺について書くよ。

青き湖面と、牛ばかり①ー釧路・トドワラ・阿寒湖周辺

クリームパンのような手を持つ男を追いかけて、私は札幌へ移り住んだ。

札幌へ来て最初のゴールデンウィーク。広い北海道の中でどこへ行くべきか?答えはもう決まっていた。海面上昇の影響でじわじわと失われつつある、「この世の果て」ことトドワラだ。世界の果てなんてのはウテナでよく聞いたものだが、果たして北海道にある「この世の果て」とはどんなものか。テーマパークのように楽しいところではないだろうし、美味しいものが食べられるわけでもないが、とにかくなくなる前に見に行かねば。そんな思いに突き動かされ、クリームパンと2人で向かうことにした。

 

5月3日(木) 札幌〜釧路

札幌からトドワラまでは300キロ以上あるから、ひとまず近くまで行かねばならない。私たちは釧路でレンタカーを借りてトドワラを目指すことにした。

釧路へは飛行機でも電車でも行けるが、ケチって高速バス「釧路特急ニュースター号」に乗る。交通費を浮かせてその分美味いものを食べる算段だ。お昼までに釧路へ着く便は早々に売り切れてしまっていたので、仕方なく13時頃に札幌を出発するバスに乗った。渋滞で到着が遅れ、釧路に着いたのは19:30頃だった。

腹はペコペコ、尻は鈍く痛む。足早に真冬のような寒さの釧路を歩き、ホテルへチェックイン後今日の楽しみ「あけぼの」へ向かった。クリームパンのお気に入りの居酒屋で、大型連休では予約がないと入店を断られるほど大人気。乾杯した後、欲望のままに注文をした。

 

【今夜の食べたもの】

蕗と厚揚げの煮物

ホタテの刺身

バターコーン

行者にんにくの天ぷら

ラーメンサラダ

俵形コロッケ

刺身盛り合わせ

海老の刺身

玉ねぎポン酢

私はこの歳にしては食に煩く、めんどくさいと性質であることを自覚しているが、ここの食べ物はなんでも美味かった。

とくに、行者にんにくの天ぷら。食欲をそそる香り、口に入れた瞬間の軽やかさ、新鮮な素材の旨み。北海道に移り住んでから食べたものの中で1番と言っていいほど美味かった。すっかり行者にんにくの虜になってしまった。忘れられない味の一つになった。

 

あけぼのを後にし、二軒目に「かど屋」へと向かった。まだまだ寒い釧路の5月、22:30になっても行列ができていた。かど屋はつぶ焼と釧路ラーメンを出す歴史ある店である。

つぶ貝の行灯がチャーミングで嬉々として写真を撮った。

ラーメンの前につぶ焼を出すスタイル。なかなか最後まで身を取り出せない私に対し、連れはクリームパンのような手にも関わらず器用に中身を取り出していた。なんだか悔しい、私の方が刺繍をやっていて器用なはずなのに。つぶ貝を食いたいという情熱が足りないのか。悪戦苦闘していると気の利くマダムが「途中で切れたら、貝を垂直に板に叩きつけるのよ」と実践しながら教えてくれた。ぽろっと出てきた!すごーいという当たり前の感想が漏れる。

つぶ焼は甘めのつゆを入れて焼いているので、貝特有の磯の香りに甘めの味わいが加わり食べやすく飽きない。

つぶ焼が食べ終わる頃に、黒々とした釧路ラーメンが出てくる。汁の色のわりに味は薄めだと聞いていたが、普通のラーメンよりもむしろ薄めなのではないだろうか。散々こってりした料理を(それこそジンギスカンなんか)食べた後には沁みそうな味わいだ。懐かしく心温まる一杯だった。

 

酔い覚ましに、釧路の街を歩く。

躓きそうになり足元を見ると、鮭のレリーフがあった。この厳しい顔。

ライトアップされた橋の下の水面が美しかった。

湖面も牛も出てこなかったが、食レポを書きすぎたのでこの辺りで。

ロマンスの出発点ー熱海

冷たい雨が降る10月の17日、一人で熱海に行った。仕事は順調だったけれど、私生活面にガタがきてしまっていて、一人で過ごす夜がないと苦しいくらいになっていた。そこで以前から泊まってみたかった「ロマンス座カド」を予約して、熱海への逃避旅行を計画した。

私の旅行には「前向きな旅行」と「後ろ向きな旅行」の二種類があるが、今回は完全に後者だった。この日の天気は私の心に呼応するようにどんよりと垂れ込めた雲に覆われ、真冬のような寒さだった。電車から降り、楽しそうな人々を横目に足早に喫茶店を目指す。食欲が無くて、朝ごはんは食べずに出てきたため、お腹が減っていた。有名な「ボンネット」の前にたどり着くと、「店内満席です」の立札が。しょうがないことだけれど、少しむしゃくしゃして、もうこんな日はさっさと風呂に入って寝てしまうと思い、宿を目指した。f:id:goemonburo5030:20201201134419j:plain

入れなかったけれど、写真だけは撮ってきた。次があれば行きたい。

今回の宿「ロマンス座カド」は、同じく熱海にある「ゲストハウスマルヤ」が経営する宿で、ゲストハウスの使い勝手の良さはそのままに、個室で過ごせる宿である。部屋によって内装が違うのだが、一番気に入った青いベッドリネンの部屋を予約した。

https://romancezakado.jp/

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荷物を置いて一息つくと、「せっかく熱海に来たのにこのまま寝てたまるか」という反骨精神のようなものがむくむくと湧いてきた。ゲストハウスのスタッフさんに「そんなに混んでいなくて、ゆっくりできる喫茶店はないですか?」と聞いてみると、「田園」という店を教えてくれたのでさっそく向かう。降ったりやんだりする雨をうっとうしく思いながらもたどり着くと、まず飛び込んできたのは琥珀色のシャンデリア。次に鯉のおよく池。オーナーさんが奥から顔を出すと、あまりにも店の雰囲気となじむ人物が現れて驚いてしまった。この店はアタリだと思った。

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頼んだのはジャムトーストに紅茶。何の変哲もないメニューではあるけれど、その確かな存在感が頼もしい。分厚いトーストを頬張ると、寒さでこわばったからだが解れた。

この旅行の目的は逃避だけれども、もう一つ、買ったばかりのカメラを使ってみることも目的だった。トーストと紅茶の写真をさっそくカメラで見てみると、予想以上に綺麗に撮れていて嬉しくなった。

田園 - 来宮/喫茶店 [食べログ]

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すっかり持ち直したので、少し熱海の街を歩いてみることにした。カメラ片手に歩くのは、普通の散歩と視点が変わるので楽しい。

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スマホと違って暗い景色も良く撮れる。ちなみに私は学生時代にNikonのカメラばかり使ってカメラだこが出来てしまっている為、結局ミラーレスもNikonから選んだ。

夜も深まってきた。そろそろ今日のお風呂と決めていた「福島屋旅館」へ。

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入り口左手にいる番頭さんにお金を払い、いざ風呂へ。本当はここでドライヤーを貸してもらえるとの情報を入手していたのだが、すっかり忘れていた。

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お湯が今まで入った中で一二を争うほど熱く、外が寒かったから余計に熱くて、まともに入れないほどだった。いそいそと身体を洗い頭を洗い、ようやく足もとからそっと湯に浸す。やっぱり熱いけれど、銭湯に来てお湯に浸からずに帰るなどありえないので、気合でドボン。熱すぎて身体は動かせないのだが、じっとしていると気持ちいい。この時は始めから終わりまで誰とも合わず、静かに過ごすことが出来た。

脱衣所で火照った身体と濡れた髪を扇風機で乾かしながら、夜は店で食べずに部屋でひっそりと食べようという考えがむくむくと浮かんできたため、近くの焼肉屋で弁当を予約した。

温まった部屋でお茶を飲みながら弁当をもそもそ食べ、好きな漫画の新刊を読み終わると、ひさびさに焦燥感の無い穏やかな眠気が訪れた。

 

18日の朝は気持ちの良い目覚めだった。窓を開けると昨日よりだいぶ寒さが弱まっていて、過ごしやすい気候だった。軽く身支度し宿を出て、マルヤへ朝食に向かう。

目の前の干物屋さんで干物を選び焼いて食べられるのが売りで、私もサバの味醂干しを焼いた。味醂干しはもともと色がついている為、イマイチ焼けているのかいないのか分からず、取り出すと生焼けだったのでレンチンした。

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味噌汁もちょうどよい塩味でよい朝ごはんだった。

名残惜しくも宿を出て、「起雲閣」を目指す。熱海の三大別荘の一つと言われた起雲閣は、谷崎潤一郎山本有三も訪れた赴きある洋館である。なにやら素敵なステンドグラスを見ることが出来るようなので、ステンドグラス好きとして熱海では外せないスポットだった。

起雲閣のご紹介 | 【公式】オーベルジュ フォンテーヌ・ブロー熱海|伊豆

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見て回った中で一番綺麗に撮れたステントグラス。色遣いがクラシックで気品を感じる。

洋館内の喫茶店でロシアンティーを飲み、次に向かうは「オーシャンスパFuua」。GOTOのクーポンが使えるそうなので、海を眺めながら風呂でも入ろうという目論見だ。

オーシャンスパ Fuua(フーア)| 熱海の日帰り温泉施設(公式サイト)

ここへ向かうのに大変手間取ってしまい、間違った道をぐんぐん進んでついにニューアカオまで行ってしまった。たどり着いたころにはうっすらと額に汗をかいていた。

 スパは確かにオーシャンビューで眺望は素晴らしかったのだけど、浜辺の道が近くてそちらから見えるんじゃないかと気が気ではなく、すぐにひっこんでサウナでぼーっとすることにした。

旅行のラストは来宮神社へ。飲酒による災いを避ける「酒難除守」があると聞いて、酒ばかり飲んでいる友人へ送りたいと思い立ち寄ることにした。

トップページ ■ 來宮神社

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流石に冷え込んできたので人はまばらだったが、滝の音を聞きながら休めるベンチがあったり、カフェスペースがあったりと境内でゆっくり過ごせる工夫がされている神社だと思った。

帰りがけに来宮神社すぐの「とん一」で珍しい牛肉の生姜焼きを食べて、帰路についた。

とん一 - 来宮/洋食 [食べログ]

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私の家から片道2000円足らずで行ける熱海だが、近くても旅情を感じられる良い旅が出来た。

理想の原風景を求めて―山形

田園風景を見ると、初めて訪れた場所なのに、どこか懐かしい感じがする。それはきっと「理想の原風景」みたいなものが勝手に私の中に刷り込まれていて、似たものを感じるからだろう。今回訪れた山形県大蔵村肘折温泉も、やはりどこか懐かしかった。

 

10月31日

東京駅からつばさに乗って山形駅へ向かう。いつもだったら高くて新幹線など乗れないのだが、JR東日本えきねっとでの割引「お先にお得だねスペシャル」でなんと半額だったため、利用することにした。新幹線での旅は旅情があり乗っているだけで楽しい。

 

11:30頃山形駅に着き、新庄駅へ行く電車が少し待つため、駅直結の百貨店に入りおみやげを物色した。巨大なセロリ(なぜかセルリー表記)があり、これでポトフのダシを取ったら最高だろうなと思った。関東ではこの値段でこの大きさはなかなか出会えない。

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13時手前に新庄駅に着く。これから肘折へ向かうバスに乗る為、軽く腹ごしらえをと思い駅の蕎麦屋に入ろうとしたが、やっていなかったため少し歩いて「急行食堂」へ入った。

 ラーメンの写真

急行食堂 - 新庄/定食・食堂 [食べログ]

名物らしき「とりもつラーメン」を食す。丸い球体が入っておりてっきり卵の黄身かと思っていたらキンカンという成長中の卵らしい。珍しいものを食べられた。

 

ようやく訪れたコミュニティバスに乗り込み、肘折を目指す。新庄駅から肘折温泉まで、一時間もかかるようだ。バスは人々を詰め込みひたすらに山道を登って行く。

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なんだか『夏目友人帳』の夏目君が住んでいるところみたいだな、そのあたりの森から妖怪が出てきそうだなと想像しながら一時間ほど揺られると、とうとう鄙びた温泉街に到着した。

 

バスを降りるとすぐそこにはレトロな郵便局が。

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調べたところ、昭和12年に建てられた木造建築の郵便局舎で、窓が〒の木枠であったりと意匠をこらしたデザインでなかなか面白い。町のシンボル的存在のようで、道行く人が写真を撮っていた。

 

今回のお宿である「若松屋村井六助」にチェックインして、荷物を降ろす。古い感じはするが掃除が行き届いており、気持ちよく過ごせそうな部屋だ。

山形県肘折温泉 若松屋 村井六助

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温泉は男女1つずつのほかに、貸し切りのお風呂(予約はできず、空いているときに入ることができる)があり、ゆっくりと温泉と向き合える宿だ。お風呂は体感的に39度くらいかな?熱すぎずぬるすぎずちょうどよい、いつまでも入っていたくなる温泉だった。

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宿の温泉に入る前に、夕食までの時間で街歩きをすることにした。

移動で少し身体が固まっていたので、まずは公衆浴場の「上の湯」でひとっ風呂。ここは温泉にただ入る為の場所なので、私もかけ湯をしてから温泉に浸かることに。昼間に入る温泉ってなんでこんなに最高な気持ちになるんでしょうね。

風呂場になぜか仏像があったので、見つめ合いながら体育座りで温泉と一体化することに専念した。

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上の湯から上がるとぽっかぽかで、コートが要らなくなったのでいったん宿に荷物を置いて、街歩き再スタート。こんな寒いのに何で皆、素足に下駄で、浴衣なんかで出歩いているのだろうと思っていたけれど、温泉に入って暑かったのだなと理解できた。

町並みは極めてレトロで、どんなどころでも写真を撮りたくなってしまうような魅力を備えていた。

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 橋を渡ったり川を眺めたりしながら過ごすあっという間に夕食の時間に。

夕食は刺身や焼き魚のほかに、お肉たっぷりの芋煮、キノコの和え物、食用菊のおひたしなど山形らしい食材が多く使われていて大満足だった。なかでも芋煮は良い和牛が使われているのかうま味があり味付けも非常に好みでおいしかった。

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11月1日

名物の朝市を巡る為に頑張って早起き。肘折は朝が早く夜も早い朝方の町のようだ。

朝市で売られているのは野菜や干したきのこ類、餅やしそ巻きなど素朴な食材。私はしそ巻きが大好きなのでもちろん購入。同行者は餅を買っていた。

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売られているものより印象的だったのは、それらを売るお婆さん達の姿だ。皆ほっかむりのようなものを頭に被って、小さくて、同じ人が何人もいるのかと錯覚するほどだった。

 

朝食を食べて行きと同じバスに乗り込み、新庄駅へ。駅の蕎麦屋が営業していたので、私は鴨肉カレーを、同行者は鴨南蛮そばをいただいた。

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十割蕎麦と鴨料理 かもん 新庄駅本店 - 新庄/そば [食べログ]

 

昼過ぎ、各停の電車に揺られながらとうとう山寺駅へ到着。ちょうど紅葉が見られる季節で、あたりは観光客でにぎわっていた。

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なかなかに険しい道のりを歩き続け、とうとう一番上まで到着。登り始めるまで震えるくらい寒かったのに、頂上ではすっかり暑くなってコートを脱いで一休みした。

帰りがけに骨董屋を見て、茶屋で餅を食べて帰路へ。山形駅周辺の店でお土産を買いこみ、つかの間の旅行は終わりを迎えた。

 

社会人になってもちょこちょこ旅行できることを嬉しく思う。

西日本終末旅行記⑦倉敷編

3月12日

 尾道で最後の車中泊をした私たちは、朝焼けを眺めた後朝ご飯を食べるべく古民家を改装したおしゃれなカフェ「オルタナ」へ向かった。

tabelog.com

開店と同時に入店した私たちは、温かい飲み物と食事をそれぞれ頼んだ。私は紅茶に野菜たっぷりのピタパンを注文。ピタパンって家ではなかなか食べないけれど、すごくおいしいな。

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食器といい内装といい、店主さんの「やりすぎないオシャレ」なセンスが心地よかった。尾道へ行った際にはまた立ち寄りたい。

 

近くの神社に立ち寄り、猫を眺めた後出発。お昼ごろに旅の終着点である倉敷へ到着した。倉敷を終着点とした理由は、お互いの帰るべき場所からアクセスがいいこと、そしてさまざまなお店が立ち並び物欲を満たせるからだ。

倉敷の美しい街並みを歩いていると、『私の小さな古本屋』の著者が営む「蟲文庫」が現れたが、この日は臨時休業だった。以前倉敷を一人で訪れた際にも定休日か何かで入ることが出来なかったのだが、今回も機会に恵まれなかったようだ。次回こそ開いているといいな。

mushi-bunko.com

ちょっと悔しくて記念に看板だけ写真を撮った。

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お腹がすいたので、近くのカレー屋さんでお昼にした。久々にサフランライスを食べたが、色と香りが食欲をそそり、ペロッと平らげてしまった。家でも黄金色のサフランライスを食べたいものだ。

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KuKu (クークー) - 倉敷/タイカレー [食べログ]

 

昼食後は気の向くままに美観地区を散策した。雑貨屋に入ったり、疲れたらカフェに入ったり。旅が今日で終わってしまう悲しみで、あんまりテンションは上がらなかった。

倉敷意匠計画室の直営店「倉敷意匠アチブランチ」で、二人していたく気に入る陶芸作家に

出合い、お互いに猫の一輪挿しを買った。

倉敷意匠 atiburanti|top

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今回の旅で買ったおみやげ。尾道の「紙片」と下関の「ロバの本屋」で買った本とCD、湯町窯のマグカップと小皿、倉敷のアチブランチで買った一輪挿しとタオル、革小物屋さんで買ったキーケース。

 

振り返ってみると、確かに起きたことなのに、ぼんやりと夢の中にいるような心地になる。そのぐらい楽しくて幸せな旅だったのだ。

時々この日々を思い出しては、懐かしくて苦しいような気持になる。一生この旅の日々が続いたらいいのになと思わずにはいられないけれど、そうもいかない。

きっとまたこんな旅ができる、という希望を胸に、毎日生きている。

西日本終末旅行記⑥山口編3

山口県は自然のスケールが大きいところが好きだ。竜宮の潮吹きなんて「ここは日本か?」と思うほど。同じくらい、山口県の人の温かさも好きだ。誰か山口県で雇用してください。当方23歳大卒、二次新卒として採用可能です。いかがでしょうか?

就職活動はこの辺で。それでは本編スタート!

 

3月11日

天気の良い朝だった。身支度を済ませ、セブンで一風堂の豆腐スープとガルボを買い、朝食とした。

この日はまず私の激押しスポット「なぎさ水族館」へ向かった。

nagisapark.jimdofree.com

なぎさ水族館は小規模ながら、ニホンアワサンゴなど珍しい生き物の展示や、ユーモア溢れる紹介文が楽しい個性派水族館だ。ショーの類はないものの、アメフラシや小さなサメ類が触れるタッチプールがあり、大人も子供も楽しめる施設となっている。周防大島に訪れるたびに来館しているが、まったく飽きがこない。

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名前は失念したが、いつも悲しそうに天井を見上げているこの魚にも再開できた。表情豊かな魚だと思う。

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アメフラシやナマコなどを嬉々として触る私。偶然にもアメフラシと柄が似ている服を着ていた。

 

ひとしきり魚介類を見て満足した後は、知る人ぞ知る激ウマうどん屋へ向かった。食べログなどのサイトに表示が無かったので、リンクは貼れないが正式名称は「純手打ち 一心うどん 泉本屋 」というらしい。周防大島は移住者が多いのが特徴で、この一心うどんのオーナー御夫婦も移住者の方。風光明媚で温暖なこの島を一度訪れたら、住みたくなる気持ちは私もよく理解できる。職さえあれば住みたいのにな~(何度でも言う)

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一心うどん外観。店の前でお子さんが遊んでいることもある。駐車場有なので車での来店もOK。田んぼの真ん中にあるので道に迷うかも。

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メニューは季節によって変わるようだ。今回はにんにくの芽と豚肉のかき揚げうどんを頂いた。にんにくの芽をかき揚げにするという発想が無かったのだが、独特の香りが衣に包まれることで柔らかく香り、豚肉のうまみを引き立てていた。そしてインパクトのあるかき揚げに負けないくらいの柔らかさとコシを兼ね備えたうどんを間髪入れずに口の中に運ぶと、もうめちゃくちゃうまい。生きててよかったという気持ちが内側から湧いてくる。関東にあったら通いたい店である。

 

うどんで身も心も満たされた後は、笠原養蜂場という蜂蜜販売&カフェへ向かった。ここは以前私が総務省の行う「ふるさとワーキングホリデー」制度でお世話になった思い入れの深い場所でもある。

kasahara-honey.net

店の前では丁度菜の花が見ごろを迎えていた。

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おもむろに店内に入ると、お世話になった方々の顔が現れて懐かしくなった。

あの時はブラック部活で精神をやられていて、すべてから距離を置きたいと逃げ込んだ先がこの養蜂場だった。この地で私ははじめて鍬を握り、綺麗な空気を吸い込み、ハチと戯れ、おいしいものをたくさん食べて、ようやくまた大学に通えるようになった。私にとってここは、思い出の場所であるだけでなく、再生の土地なのだ。

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店内では大好きな蜂蜜プリンと、蜂蜜うめドリンクをいただいた。蜂蜜プリンは大人気なのでよく売り切れるのだが、今回はタイミングよく食べることができた。

 瓶入りの蜂蜜を数種類買い込んだあとは、道の駅「サザンセトとうわ」へ向かった。

sazan-seto.com

本当はジャムズガーデンで梅ジャムを買いたかったが、この日は定休日だった為購入できず。酸味たっぷりの梅ジャムを食パンに塗って食べるのがおすすめ。

 

道の駅を訪れた目的は、駅の裏手にある無人島「真宮島」へ行くため。干潮時のみ島への道が現れ、島へ渡ることが出来るファンタスティックな場所だ。

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 この旅で一番お気に入りの写真。奥へ行くほど岩がごつごつしていて足場が悪い。ここから見る海は格別に綺麗だ。

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リアルたいようの石。こんな石がその辺にころころ落ちている。以前これを拾って先輩に送ったところ大変喜ばれたので、また見つけられてよかった。f:id:goemonburo5030:20201003170110j:plain

 夏場なら、こんな透き通った海にいつまでも浮かんでいたい。沖縄の海もきれいだったけれど、私はこの小さな島が点々と遠くまで連なるこの島の海の景色が一番好きだ。

 

旅もそろそろ終わりへと近づいている。

今日のお風呂は岩国市の「こんぱる湯」だった。月の明るい夜を、日食なつこを聴きながら倉敷へひた走った。

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こんぱる湯 | ぶち!岩国

 

次回で西日本終末旅行記は最終回です。

西日本終末旅行記⑤山口編2

山口県大好き!山口県最高!老後は山口県に住みたい!

職さえあれば今すぐにでも山口県に移住したいんですけどね。まずは自動車免許取らなきゃ。

さて、本編スタートです。

 

3月10日

7時ごろに目覚める。温泉のおかげか身体が軽い。身支度をして朝食を頂く。有りがたいことに部屋食だったので、ゆっくりと食べた。

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なんだかんだこういうご飯が一番好きだし、一番うまいと思っている。味噌汁に使われている味噌は色が白っぽく優しい味わいだった。

宿の一階に見慣れた大きさの薄い本があったため、おやおや?と手に取ってみると『孤独の輪行』(拝御礼著)という自転車で温泉街を回るという趣向の同人誌だった。それを読むと、どうやら近くに小さな本屋があるらしい。俵山温泉との別れを惜しみつつも、鹿の親子と出会った道を上り、山道を進んだ。

 

本当にこんなところに本屋なんてあるのか?と疑うような民家一つない山道を進んでいくと、ようやく一見の古びた建物が見えた。駐車場らしき場所にロバのモチーフのついた杭が一本。まちがいなく「ロバの本屋」だ。

www.roba-books.com

猫と犬がそれぞれ一匹ずついる小さな本屋で、店内に入ると猫ちゃんと店主があいさつしてくれた。ラインナップは人を選ぶかもしれないが、私にとっては買いたい本だらけで熱心に本を選んだ。散々悩んだ末『自作の小屋で暮らそう』『給水塔』の二冊を買い、窓辺のスペースで本を読みつつスープとパンを頂いた。

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 黒豆とごぼうのポタージュに、アンチョビチーズ・クリームチーズ蜂蜜のトースト。やさしく染み渡る味わいだった。

なんだか居心地が良くて、3時間以上滞在してしまった。近くにあったら絶対に通うのにな。

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あったかくて眠くなってきてしまったところを先輩に激写された写真。

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左:買った本 右:ぼさつのおみせ、ありがたいお言葉が書いてある

謎の手書きおみくじがあり、一枚引いてみたりもした。結局これはなんだったのだろう。いまだに私の手帳に挟まっている。

 

ロバの本屋を後にし、近くにある雑貨屋さんを目指した。

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つつみ舎

 

紙物の雑貨が多く、大きな犬がストーブの前でのんびりと寝転がっている姿に癒された。寒い日だったのでホットレモネードを頂き、あったまった。

 

そろそろ日も落ちてくる時間になり、それからはひたすら周防大島を目指して山口を下に下にと下って行った。夜十時頃、ようやく道の駅「サザンセトとうわ」にたどり着き、波の音を隣に眠りについた。