黄昏の船着き場にて

風の吹くまま気の向くままに

青き湖面と、牛ばかり②ー釧路・トドワラ・阿寒湖周辺

5月4日は朝から慌しかった。 いつもは9時間睡眠の私が、7時にホテルを出発するという苦行をしても訪れたかったのは「鮭番屋」だ。鮭番屋は炉端焼きの店である。朝から炉端焼きで新鮮な魚介類と白米とかき込むためだけに、日ごろ乗らないタクシーを捕まえて店…

青き湖面と、牛ばかり①ー釧路・トドワラ・阿寒湖周辺

クリームパンのような手を持つ男を追いかけて、私は札幌へ移り住んだ。 札幌へ来て最初のゴールデンウィーク。広い北海道の中でどこへ行くべきか?答えはもう決まっていた。海面上昇の影響でじわじわと失われつつある、「この世の果て」ことトドワラだ。世界…

ロマンスの出発点ー熱海

冷たい雨が降る10月の17日、一人で熱海に行った。仕事は順調だったけれど、私生活面にガタがきてしまっていて、一人で過ごす夜がないと苦しいくらいになっていた。そこで以前から泊まってみたかった「ロマンス座カド」を予約して、熱海への逃避旅行を計画し…

理想の原風景を求めて―山形

田園風景を見ると、初めて訪れた場所なのに、どこか懐かしい感じがする。それはきっと「理想の原風景」みたいなものが勝手に私の中に刷り込まれていて、似たものを感じるからだろう。今回訪れた山形県大蔵村の肘折温泉も、やはりどこか懐かしかった。 10月31…

西日本終末旅行記⑦倉敷編

3月12日 尾道で最後の車中泊をした私たちは、朝焼けを眺めた後朝ご飯を食べるべく古民家を改装したおしゃれなカフェ「オルタナ」へ向かった。 tabelog.com 開店と同時に入店した私たちは、温かい飲み物と食事をそれぞれ頼んだ。私は紅茶に野菜たっぷりのピタ…

西日本終末旅行記⑥山口編3

山口県は自然のスケールが大きいところが好きだ。竜宮の潮吹きなんて「ここは日本か?」と思うほど。同じくらい、山口県の人の温かさも好きだ。誰か山口県で雇用してください。当方23歳大卒、二次新卒として採用可能です。いかがでしょうか? 就職活動はこの…

西日本終末旅行記⑤山口編2

山口県大好き!山口県最高!老後は山口県に住みたい! 職さえあれば今すぐにでも山口県に移住したいんですけどね。まずは自動車免許取らなきゃ。 さて、本編スタートです。 3月10日 7時ごろに目覚める。温泉のおかげか身体が軽い。身支度をして朝食を頂く。…

西日本終末旅行記④山口編1

さて、一行は島根県の海沿いをゆっくりと進み、山口県へと向かいます。 行く先にはどんな町が、どんな海が、どんな石ころが待っているのでしょうか…… それでは本編スタート! 3月9日 ゆうひパーク三隅で目覚めると澄み渡った晴天で、春の訪れを感じる柔らかい…

西日本終末旅行記③島根編2

続編を書くのにずいぶん日が経ってしまった。その間に私の社会人生活は半年を過ぎたが、いまだに学生気分が抜けないでいる。 ちなみに今、このブログを書いているのは勤務時間中である。 3月8日 奥出雲多根自然博物館で朝食をとる。美味しいお米が自慢のよう…

西日本終末旅行記② 島根編1

3月6日 島根に行くのは二度目である。一度目は周防大島のワーキングホリデー帰りで、私がゲストハウスデビューした時だ。大学二年生の春休みのことである。もうずっと昔のことのような気がして、懐かしい。 一度目に訪れた時、銭湯で出会ったあの石油臭いよ…

西日本終末旅行記① 尾道編

このブログは2020年3月5日〜3月12日の間、女ふたりで西日本をふらふらと旅した記録である。 まず、ざっくりと登場人物を紹介しておく。 ・筆者(私) 当時大学四年生、最後の春休みを利用し旅に出る。神奈川県在住。かつて狂言研究会に在籍していた。紛れも…

春の陽気を背に受けて—長崎

気づけばあっという間に試験も終わり、春休みが来た。 大学三年生の春休みに待ち構えているもの、それは就活である。朝井リョウの『何者』にはその恐ろしさが存分に描かれているというが、怖すぎて私はまだ読んでいない。 UIJターンのイベントで長崎の企業に…

人生の休憩所―京都2

11月11日 滅多にないような心地よい眠りから目覚めて、ゲストハウスの一階へ降りる。 昨日買っておいたフレンチトーストをトースターで温め、紅茶を淹れて炬燵に足を入れる。ふと、自分の家のようにリラックスしていることに気づく。 京都旅行二日目、真っ先…

人生の休憩所―京都1

11月10日~12日、修学旅行ぶりに上洛することにした。 行きたい気持ちはずっとあったが、決定打に欠け長年足を運ばずにいた。そんな私を京都へ向かわせた一番の動機は、へし切長谷部が「京のかたな」展に出品されるというニュースを目にしたことである。福岡…

海道をスカートで駆ける―尾道

「いい加減、旅行のことをどこかにまとめたら?」そう言われ続けてずいぶん経った。 自分でもそろそろ、なにか目に見える形で旅行の記憶を保存しておきたいという気持ちがあり、このブログを開設するに至った。手始めに8月29~30日の尾道でのことを書こうと…